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2013年7月 2日 (火)

18回目<山本農園便り>その③

■H25年7月2日

18回目<山本農園便り>その③
     -「農」の本質を理解しよう!ー

<「有機農法」野菜は良いことばかりか?>
 
前回、効率性を重視した野菜の生産システムにより、大切なものを失ったという前振りをしておきました。それは何か答える前に、よく聞く「有機農法」のことを理解して頂きたいと思います。「有機農法」は「効率性を重視した生産システム」とは対極にあると思われますが、全面的に受け入れてよいのでしょうか?
 私が毎日仕事をしながら聞いてるFM局に「有機野菜」の信奉者で番組の中でもよく取り上げる女性DJがいます。彼女がある専門家に取材したとき、「有機野菜だからといって、栄養価が高くて安心だとは限らない」という話を聞いて「えっ!」と思ったという話をしていました。私は心の中で「そうやで!」と思いましたが、それ以上話題は進展せずに終わってしまい、彼女は相変わらず番組の中で有機野菜を勧めています。その先をつき詰める事が大事なのに!!とにかく「イメージ」や「空気」だけが優先して「本質」を見失ってるのはよくある話だ、ということはこの前も書きましたが・・・・でもちゃんと理解せずに他人に勧めるのは「よくないなー」と思う。
 農法に限っても「不耕起栽培」「永田農法」あとで今回のポイントとなる「自然栽培」(ちなみにちょっと違う「自然農法」というのもあるが)等等、いろんな名称の栽培方法があります。それぞれに「本質的な意図」があって、それを理解することが肝心です。

<「有機農法」の本質は?>
 これらのなかでも「有機農法」という言葉は語る人の目的によって多様な意味を持つ言葉なので、聞くほうは注意が必要です。
 ①狭義の有機農法
植物は光合成により糖を合成し、エネルギー源とします。糖は炭素、水素、酸素の化合物なので、<C-H-O>と略記しておきます。その他の栄養分は根から吸収します。3大栄養素は窒素、リン、カリウムですが、根からは化合物中のイオンとして水に溶けているものしか吸収できません。なので例えば<N-><P-><K->と表しておきます。3大栄養素の他にも、微量であっても必須の元素があと11あります。
 <C->は甘み成分となります。(代表的なのが糖<C-H-O>ですね)<N->は苦味です。有機肥料は生物由来のため、生物体内で合成されたアミノ酸などを多く含みます。これは例えば<N-C-H-O>と表現できます。従って有機肥料を多く使えば、光合成だけではなく、根からも<C->を吸収できるので、甘みのある野菜ができる。これが一番の本質です。
 
 
②広義の有機農法
なんやそれだけか?と思うかも知れませんが、確かに甘みのある野菜はおいしいと感じます。ただ一方、化学肥料を使わずに「有機肥料」を使うというのは「環境保全」にもつながります。あとで詳しく述べますが、化学肥料の多用による有害な硝酸塩成分の増加という問題があることが最近わかってきたし、化学物質による環境破壊も指摘されている。となると、少し話は異なるが、「農薬の規制」という話と一緒になって農水省の規格である「有機JAS」制度が出来ました。

すなわち
JASによる有機農法=有機肥料による栽培+化学農薬の規制です

本来は「有機肥料による栽培」と「無農薬栽培」は別物なので、JAS規格により話はややこしくなって、それまで有機農業をやってきた人達も戸惑ったようですが、ただ「有機農業」を世間に知らしめる効果はあったといわれています。
 もうひとつ、これは後で述べる
「自然栽培」を「有機肥料」を用いて行う農法を「有機農法」と呼ぶ人もいます。ややこしいですね。
 
 ③「有機農法」に対する疑問

では「有機農法」は安全なのか?先に出てきた
「永田農法」創始者である永田照喜治氏は次のような意見を持っています。
 「最近の有機農法ブームで、誤解されている方もいるようですが、中身の成分がはっきりとわかっていて計算できる科学的な農薬は、植物性や漢方など残留性分がはっきりとわからない農薬と比べて、使用法さえ誤らなければ安全なものなのです。(中略)有機肥料は、牛糞や鶏糞、豚の糞などの厩肥と、植物性の堆肥などを混ぜてつくられます。もし安全な厩肥を求めるのであれば、まずその餌の安全性を考える必要があります。」
  有機肥料は遺伝子組み換え農作物や農薬入りのえさを食べた家畜の糞が原料になってるかも知れないので品質が明確なものを使いたいと言う考え。消費者としてはどうしてよいか、わけがわからなくなって来ましたね。Photo_4

<「効率性」の替わりに失ったもの>
 
さらに混乱するかもしれませんが、前回から前振りしていた効率性を重視した野菜の生産システムにより、失った大切なもの」は何かというと「栄養」です。

この50年で、野菜の栄養は激減しています。

右上は科学技術庁の発表する食品成分表のデータです。 リンゴのビタミンAを除いてあとは驚くばかりに栄養価は下がっています。
 これが
、「F1種+化学肥料+農薬」のセットシステムによる農業の効率化の結果です。野菜に栄養が無いなんて詐欺に遭ったみたいですよね!私はこれを見て驚きました。ショックを受けました。でも「聞いた事がある」と言う人も結構居ました。でも消費者として「仕方がない」とあきらめてよいことなんだろうか?
 考えてみれば当たり前といえば当たり前の結果です。つまり、
野菜が自分の体内に栄養を蓄えるのは、食する人間のためではなく、厳しい環境の中で自分が生きて行くためです。肥料をどんどん与えて、害虫から守ってあげたら、自分で抵抗する必要はないので栄養を蓄える必要は無いわけ。

<「奇跡のリンゴ」の意味するもの>
 たぶん
「自然栽培」の言葉を定着させたのは有名な「奇跡のリンゴ」の著者である木村秋則さんだと思います。私は「奇跡」という言葉を安易に使う傾向には非常に抵抗感があるのですが、果樹を無農薬で作るなんて本当に奇跡です。私は父親が亡くなってから何年か、みかんの世話をしました。(そのうち片手間では無理なのであきらめた。)時間の都合をつけて、年一回は農薬散布をするようにしたのですが、それでは全く不足で、見事に不細工なみかんが出来ました。そんな時、多分私も含め、多くの人は「山の樹木は農薬なしで青々と育っているのに、なぜ人が栽培する果樹はそうならないのか?」と考えます。木村さんも考えました。これを実現するために涙ぐましい悪戦苦闘がなされます。傑作な話や涙を誘う話も沢山ありますので是非一度この本をお読み下さい!
 この本の基になったのはNHKの番組「プロジェクトX」ですが、最初に「うそやろ!」と思えるシーンから始まります。二年間保存されていた、木村さんのリンゴを割ると・・・腐ってない!
 これなぜか?最近明らかになって来ました。つまり
化学肥料を与えすぎると根から吸収する硝酸塩態の窒素を消化しきれずに葉や茎に蓄えてしまう(人間には有害です)→これに病原菌や害虫が誘引される。→従って農薬を多用する必要が生じる。という循環になるわけです。この循環に陥らないよう、山で樹木が青々と育つ仕組みを利用しながら作物を育てようとするのが「自然栽培」です。その結果木村さんのリンゴは「腐りません」徐々に「枯れて」行きます。

 
<あとはミネラル不足>
 
 もうひとつ「現代人はミネラルが不足している」というフレーズを聞いた事があると思います。野菜は普及している化成肥料(窒素、リン、カリウムの3大栄養素で構成される)を与えていれば育つことは育ちます。ただこれだけだとそれ以外の元素は不足するのは明白。自然のままの土壌にはこれらのミネラルがちゃんと含まれているのです。

 <栄養のある野菜を栽培しよう!>

 だいたい見当はついてきました。「栄養のある野菜」を栽培するには次のような条件が必要です。

①野菜は
自分で育とうとする力を発揮させて育てることにより栄養を蓄える。
②栄養の原料となる成分を補給する。これには自然由来の有機肥料が効果的。ただし由来の明確な素材を用いる。
③市販の種(F1種)は上記の栽培法向きではない。(多分何世代か連続して育てれば適応してくるとは思うが)
 固定種も探せば販売しています
④「農薬を絶対使わない」と意地を張る必要は無いと思っています。ができれば使いたくは無い。
 
 割りと簡単な結論になってしまいましたが、この条件が整えば野菜の栄養は向上する「はず」です。なぜ「はず」かというとこれを実践して栄養分析した研究成果がないので「はず」としか言いようがありません。(少なくとも私は見たことがない。)栽培方法はいろいろあると思いますが、木村さんの「自然栽培」ほど徹底的にやるのはなかなか難しいと思うのでここではこのような目的を持った栽培方法を
「自然栽培的農法」として話を進めます。
 私は上記の理由で、消費者としては
「産地」よりも「栄養成分」を表示してもらったほうが有効だと思っています。「自然栽培的農法」は「効率的農法」よりもおそらく栽培時間がかかり、収量も少なくなるはずなので従来の流通ルートでは、商売にならない。それに替わって「栄養成分」に優れていることが示されれば価値があがるはず。商売になるはずです。

 「はず」とか「だろう」とか言っててもしかたがないので、
あなたも工夫して「自然栽培的農法」を始めましょう!!
 方法は個人の事情に応じていろいろあるはず。
 
 次回は今まで述べてきたことを理解するまで私がどんな失敗をしてきたか、今はどういうやり方をしてるかを紹介させていただきます。

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